最近懐いた少年は、不幸を呼ぶ黒猫で───、、、。
孤独なふたりが育んだ愛の行方は?
彼ヲ飼育スルCD 「大正黒華族」 第三章 ルリヤ (CV:野島健児)
明治・大正モノは大好きだし、アラジンみたいな泥棒男×プリンセスの組み合わせも大好き。だから、大正黒華族の泥棒猫・ルリヤくんは聞くべきだと思いました。結果、大当たり。ルリヤくんの本編を聞いた後、PVを見ると泣きそうになります。
ネタバレかもしれませんが、ルリヤくんは優しい子でした。泥棒やん!!というツッコミが入りそうですね。ルリヤは生きるために食べ物を盗むだけなので、そこまで悪質な泥棒ではありません。そんな優しい子と、悲しい展開はあるけれど、きちんと関係を育んで、お互いが好きだから行動を起こす。そういう純愛が楽しめます。
~こんな人におすすめ~
★野島健児のはずむような可愛い声が好き
★大正時代の雰囲気や、身分差に萌える
★トキメキはなくていい、純愛を育みたい
~だいたいのあらすじ~
私は、華族のお嬢様。療養中で、帝都から離れて一人で暮らしている。
ある日、一人でお茶をしているところに泥棒猫の少年が来た。孤独な私は嬉しくて、彼に度々おやつを与えるようになる。そうして仲良くなったある日、彼の口から「俺は不幸を呼ぶ」と告げられ───、、、、。
以下、ネタバレありの感想です。自己投影して書いてるので、苦手な方はお気をつけください。
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ありきたりな表現だけど、突然現れてビスケットを奪った少年は、私の心も奪っていった。恋か友情か分からないけれど、とにかく彼が大好きだった。
孤独な、野良猫の少年。カステラ・チョコレエト・ビスケットのような西洋のお菓子を好み、ミルクホールでネズミ捕りの仕事をしてクリームソーダを飲む彼。識字もできないくせに好みがハイカラなのは、幼少期に華族のペットとして飼われていた影響だろうか。なんでも勢いよくばくばく食べる様子に野良猫らしい素行の悪さが出ていたけれど、目を輝かせて頬張る姿は可愛くて憎めなかった。
そんな彼は、”クロイロ”、不幸を呼び込む不吉な存在。彼みたいに全身黒い毛のケモノがそう呼ばれているらしい。そんなレッテルを貼られているからか、誰かにゆっくり撫でてもらった記憶もないし、名前も無かった。ペットとして飼われていた記憶があるのに撫でてもらった記憶がない、と言うから、きっと愛しい思い出が悲しい思い出で上書きされてしまったのだろう。彼は、一人で療養中の私の比じゃないくらい、果てしなく孤独な人生を送っていたのだ。
彼との日々の中で一番思い出に残っているのが、お互いに名前をつけあったこと。自分のことをを真っ黒という彼だけど、瞳は瑠璃色でとっても綺麗。だから「ルリヤ」と名付けた。「ちょっと俺にはお洒落過ぎない?」なんて困ったような顔してたけど、「ルリヤ、か。」と呟く声に嬉しさが滲み出ていた。私は「リリー」と名付けてもらった。百合のペンダントをしているし、似合うから、だそう。
「俺だけが知ってる、特別な名前だ」
二人だけの、特別。こういうの、親友とか恋人みたいで嬉しい。彼のことをもっと近い存在に感じた。その後、何度も「リリー」と呼んでくれた。
隣人に庭の百合を切られて元気がない私を、ミルクホールに連れ出してくれた日から、雲行きが怪しくなっていた。ルリヤは仕事先(?)のミルクホールの店主に、自らのことをブチ猫だと偽っていたけど、黒猫、つまりクロイロだとバレたのだ。仕事はクビになるし、ルリヤがクロイロだと街中にバレていて、好奇の目を向けられた。石も投げられた。私は激怒した。投げてきた奴に口出ししようとしたけど、止められた。「リリーまで変な目で見られたら俺が嫌」だそう。悔しかった。泥棒だからと蔑まれるならまだしも、黒い見た目だけで大好きなルリヤが侮辱されるのは耐えられない。泣いた。
後日、私は近所の人や親族から嫌がらせをされるようになった。百合の花も更に切られたし、ひっきりなしに電話はかかってくるし、殴られもした。
「花も、その痣も、さっきの電話も、俺が原因だな?リリー。」
そんなことない!だけど、クロイロのルリヤがうろちょろしてるから使用人が解雇になったのは事実。ルリヤのせいではないけれど、ルリヤが関係しているのは事実だった。ついに私は、嫌がらせによる精神疲労で倒れた。意識が途絶える前に、ルリヤが私のペンダントを持って行った。両親の写真が入っているロケットペンダントだった。
しばらくルリヤに会えなかったけど、両親が大きな病院に連れて行ってくれて体調も良くなったし、近所の人の嫌がらせも両親のおかげで無くなった。我が親ながら、華族の力というのは素晴らしい。嫌がらせの日々が嘘みたいに、日々が平和になった。
そして、久しぶりにルリヤが会いに来た!!ペンダントを返しに。そして、遠出をするからしばらく会えないということを告げに。次いつ会えるか約束できない、という彼は、きっともう二度と会う気はないのだろう。
「いつ戻ってくるとか、そういうのは約束出来ねえな。ほら、俺は気ままな野良だからね」
そう言う声が震えている。本当は離れたくないくせに、強がっているのがバレバレだ。
「好きだ、大好き、大好きだ。、、、ありがとう。」
思いが溢れて止まらない様子で、手を握って、キスを繰り返すルリヤ。最後に私を堪能しきろうとするみたいだった。
「またな。またいつか!大切な、俺のリリー!」
最後まで、二人の特別な名前で呼んでくれた。これから、このペンダントを見るたび、百合の花を見るたび、「リリー」と呼ぶルリヤの顔と声を思い出すのだろう。もう会えない気がするけれど、せめて、私が付けた「ルリヤ」という名前を大切にしてくれてたらいいな。
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不幸を呼ぶとされる被差別種族の少年との、切ないラブストーリーでした。
ルリヤが本当に不幸を呼び込む存在に見えてくるストーリーですよね。ヒロインへの嫌がらせは、家にクロイロを連れ込んでいるから、と考えることができます。しかし、初めて百合の花を切り取られたのは、ミルクホールのシーンより前のことなんですよね。つまり最初は他の理由で嫌がらせされていて、ルリヤは嫌がらせの助長の原因になっただけ、とも考えられます。前者ならクロイロ差別が原因だけど、後者なら本当にルリヤが不幸を呼び込んだことになります。どちらなんでしょう、、、。
ヒロインには見えていないシーンですが、ルリヤはヒロインの両親に直談判するために、汽車の天井に乗って東京に行きます。そこで差別されて暴力をふるわれたり、散々な目に遭います。そうまでしてヒロインを助けてあげたかったんですね。近隣の人に立ち向かうとかじゃなく、華族であるヒロインの親を説得するという一番確実な方法でヒロインを救ったところに好感を持てます。ヒーロー願望を満たしたいという気持ちではなく、本当に救いたいからできた行動ですよね。本当に誠実で勇気があって優しい子なんだと思い知らされます。
ラスト、事件は解決したけど二人が結ばれていないのが、乙女ゲームのノーマルENDっぽいですよね。別れたからこそルリヤの優しさが引き立っていて良かったです。ルリヤ本人は次会う約束ができないのを「俺は気ままな野良だからね」と誤魔化していましたが、本当の理由は≪リリーには幸せでいて欲しいから、不幸を呼ぶ俺は離れよう≫ですよね。あ~~~~~~~~(泣)。
最後に、PVを見返して見ましょう。号泣しますよ。
名前を与えてくれた 「ともだち」と呼んでくれた
こんな幸せ僕には手に余るくらいさ
ちょっと華奢で長い指 百合のように咲かす笑み
血統書が付いてたら…きっと君に出逢えなかったんだね
(主題歌「リリヰ」より引用)
ルリヤのことじゃん!!!!!泣
PV最後の涙を流すルリヤに貰い泣きしてしまいます。あんなふうに軽快な雰囲気で別れを告げてきたルリヤが、あとで一人で泣いてるってことですもんね。
ルリヤ、死ぬまでに1回でもいいからリリーに会いに行ってあげてね…。
最後に
苗字の「風間」は何?昔飼ってくれてた華族の苗字?