大正ロマン、本屋に図書館!という私の大好物の世界観のゲーム「ニル・アドミラリの天秤 帝都幻惑奇譚」。CERO:Dだから、大人なシーンや残虐な殺人など色々起こるだろうな、、、それなら一番刺激が少なそうな少年から攻略したろ!ということで、最初は翡翠くんをセレクト。
以下、ネタバレです。
前半は恋愛面の感想、後半は真面目に読み物としての感想です。お好きな所から読んでくださいね。
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恋愛面の感想
「貴女には綺麗でいて欲しい」?めんどくさい!
翡翠√の恋愛を要約すると、恋を醜いと思っていた美少年が自らの恋愛感情の醜さに絶望するが、相手の女性が自分と同じところまで堕ちてきてくれて、救われる という大変美味しいものでございます。恋とはするものじゃなくて落ちるものですからね。
ここで翡翠が繰り返していた発言を振り返りましょう。
「貴女は誰も好きにならないで下さい」
「誰かを好きになって愛して…汚れて欲しくない」
「貴女だけは、この世界の一番綺麗なものであって欲しい」
恋愛感情や、その果てに生まれた自分のことを醜いを思っている翡翠は、綺麗でまっさらな主人公にそのままでいて欲しいと願い続けています。
置屋生まれ置屋育ち、親が遊女で自らも性的暴行未遂にあったことがある。そんな環境で育ったなら綺麗なものなんて諦めていてもおかしくない。それなのに好きな女性に対して汚れないでいてほしいなんて、恋愛に対して潔癖すぎる。
しかし、好きな女性に綺麗でいて欲しいなんて子供の幻想ですよ。序盤はまだ淡い恋心だったからこんなこと言っていられたんです。
誰彼構わず妬きまくりでかわいい!
ずっと綺麗でいて欲しいと思っていた主人公に手を出してしまった翡翠。
「他の男性が貴女に触れるなんて許さない」
誰のことも愛さずに綺麗でいてほしいと願っていたのに、独占欲が抑えきれず自分だけのものにしたいと思ってしまった。この流れが最高すぎ!!!!!
一度こうなってしまったら止まらなくて可愛いですね。隼人や滉など職場の男性にも嫉妬し、笹乞にも嫉妬します。笹乞は流石にないだろ!!!と叫びたくなりましたが、本当に誰にでも妬いてて、初恋らしくて愛おしいです。
自己紹介で自分のことを「焼き餅焼き」と言っていますが、そんな可愛い言葉で済ませていいの?と思いますね。
結構強引!
翡翠って見た目は儚い美少年だし口調も丁寧なのに、結構怒るし、手出すときは荒っぽい。王道だけど、そのギャップがとても好き~~~!
手首掴むシーンの描写めちゃめちゃに良かった。手のサイズは二人ともあまり変わらないし、骨ばっているとかそんな描写もないのに、力が強くて振りほどけない。たったこれだけで男女差を見せてくれるのたまらない!
初キスなんて超強引!たぶん、欲望を理性とコンプレックスで押さえつけていたから、こういう形で爆発してしまったんだね。抑圧の力ってすごい。
二回目の例のシーンも、嫉妬のせいとはいえ結構押せ押せでした。「巡回なんか行かずに貴女とずっとこうしていたい」と言い、主人公の部屋で夜勤前に一回…って、冷静に考えればだいぶ欲に負けてる。「翡翠の少女めいた綺麗な指が、私の制服のボタンに触れた。」←この文凄い。修飾語のおかげで見た目と行動のギャップが味わえる。
全体として、恋愛初心者で嫉妬しまくりの少年らしくて可愛い。今後もずーーっと、独占欲が強いまま成長していきそうな未来が見える気がします。
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読み物としての感想
翡翠√の主軸はこれら3つでしたね。
1、「女性が嫌い」の真意を知ること
2、「僕は醜い」の真意を知ること
3、女らしさ/男らしさ問題
結構ミスリードが多くて、終盤まで真実が分かりづらかったからこそ、読み物としてめちゃめちゃ楽しめました!
「女性が嫌い」について
乙女ゲームですからね、まずはこれについて語らせてください。
「女性が嫌いなんです!」「二人は仕事仲間ですから、性別なんてつまらないもので判断しません」このあたりで、こう思いました。
あ―――なるほどね。遊女の母から生まれて色々なものを見てきたから、男女の色事に嫌悪感があるんだ。でも、職場というクリーンな環境で「職場の人」とレッテルを貼れる人なら大丈夫なんだ!
しかしそうじゃなかったんですよね~。その後、女嫌いとは思えない行動が続きます。
「貴女は強い男性が好きなんですか?」
何この質問どういう意図?と、結構戸惑いました。この時点で主人公への恋心は感じられなかったから、嫉妬ではなさそう。男らしくない中性的な容姿の自分を気にしているからの発言?、、、と思わざるを得ないですよね。
ボタン付けてあげて赤面する翡翠
もう既に意識してるよね?女性が嫌いっていうのは自分に言い聞かせているだけじゃない?
地下通路のシーン
主人公の髪などに触れた挙句「僕は貴女を汚したりはしない」「貴女は誰も好きにならないでください」
はい???ちょっと待て✋言ってることとやってることが違う。主人公もそう言ってた。ついに芽生えたのか?好きな女性に触れたいという思いが。
ここまで読んでようやく分かりました。翡翠は淡い恋心を抱きつつあるけど、性的なことには嫌悪感がある。もうね、全然女嫌いではないですよ。言葉選びを間違え過ぎだ、翡翠。
短編物語の独白で「僕は多くの女性に囲まれて育ちました。その人たちには視えない澱がついていて(以下略)」と言っていたように、今まで出会ってきた女性達のことは、自分と同じように醜いと思っていたのでしょうね。しかし「彼女は、真っ白でした」。そう、出自・経験ともに綺麗な主人公には早い段階で恋をしています。
あのさ…新品の主人公は美しい、そうでない女性は淀んでいるって、言い方悪いけど処女厨だよ。
「僕は醜い」について
翡翠が繰り返すこの発言。遊女と外国人のハーフという生まれがコンプレックスということは物語の序盤で察することができましたね。
そして、本人からも話してもらえました、
「ああいうのって何もかも醜いでしょう。感情も、行為も、その果てに産み落とされるものも」「ああ、僕はやっぱり、あの女(ひと)の子供なんだ」
ここまでで、翡翠はやはり自分の出自に対して「僕は醜い」と言っていたんだ、まあ予想通りだな、と思いました、、、、、、、それだけであってほしかったんですよ(涙)。
まさか翡翠が殺人未遂をしたとは思いませんでした!
今までに伏線はありましたよ。隠さんの「翡翠のあの力があれば人も殺せる」とか、百舌山教授の「次は仲間を燃やさないように」とか。でもね、戦闘中の事故とかだと思いたいじゃないですか(泣)。それに、赤い瞳の色は「人を殺そうとした罪の烙印」。外国人だし2次元だからオッドアイでも何も不自然じゃなかったのに、まさかこんな理由だったなんて衝撃でした。
結局翡翠は、
・遊女の子という出自が醜い
・ハーフで人と違う見た目が醜い
・殺意で芽生えた能力と変わった瞳の色が醜い
これらのコンプレックスを抱えていて、さらに恋愛面でも、
・中性的で男らしくない自分が醜い
・周りの男性に嫉妬する感情が醜い
と、それはもう物凄い量をコンプレックスを抱えていました。
だからこそ、植物園のシーンでの主人公の言葉が響いたのだと思います。
「(私も朱鷺宮さんに嫉妬したから)貴方だけが醜いわけではないのよ」
「私が汚れれば貴方一人ではなくなるでしょう」
自己憎悪が止まらない翡翠に対しての、私が翡翠側に堕ちてあげる、というアプローチ。
ここ痺れました。ひたすら褒めるよりもこの発言が効いていましたよね
クリア後に読める短編物語の独白で主人公を星に例えていた翡翠は、自分と同じように汚れるといってくれたことに「そういった彼女の瞳はいつにも増して美しく、神聖に見えました」と語っています。やはり主人公が自分を受け入れて同じところまで落ちてくれることで、はじめて安心できたのでしょう。
女らしさ/男らしさ問題
これは翡翠より主人公の方が露骨でした。
女はお淑やかに従順に、と女学校で学んできた主人公にとって、一般的な社会は今までと全く違う世界。やる気を出したとて、女は武術訓練に参加できないし、大学に潜入もできない。家庭に入るための教育を受けてきた主人公が、特技を生かして社会で活躍している皆に嫉妬する。朱鷺宮さんへの嫉妬は恋愛感情由来のものも含まれていましたが、翡翠や隼人への嫉妬は社会人としての嫉妬でした。これ、作品としてすごく良かったと思います。主人公の人間らしい負の感情がこまめに散りばめられていることで、前述の「貴方だけが醜いわけではないのよ」の言葉に説得力が生まれますね。同情じゃなく本心で言っているのが伝わります。
翡翠も男らしくないことをかなり気にしていました。「強い男性が好きなんですか?」に始まり、「隼人も滉も、紫鶴さんだって杙梛さんだって、背も高くて…ちゃんと男らしくて…」、と、自分が男らしくないことを非常に気にしています。
これが何につながるかと言うと、ハピエンの翡翠の台詞、「僕が見張ります」ですね。守るんじゃなくて見張るんですよ。主人公の強さを認めたからこその言葉選びに感動しました。別に女性だから弱くないといけないってことはないし、男性は強くて女性を守る存在じゃなくてもいい。大切なのはお互いがお互いを大切に思って生きる事、という終わり方が良かったですね。
以上翡翠√の感想でした。
次はだれにしようかな。好みそうな滉さん&紫鶴先生か、先に鵜飼をやっつけるか、、、。